Murder at the Music Hall (1946)
Directed by John English
Cinematography by Jack Marta
Cinematography, Ice Skate Numbers, by John Alton


John Altonという撮影監督は、B級映画でもっとも実力を発揮する人です。彼が撮影したB級映画のなかでもAnthony Mannと組んだ作品は今ではA級扱いです。

実は私がこの人の作品で最初に注目したのは、彼の作品のなかでもあまり知られていない"Murder at the Music Hall (1946)"という作品でした。そのときはJohn Altonという撮影監督も何も知らず、ただ、チャーリー・チャンやサイレントのターザンをやっているTVの深夜枠で観たのでした。しかしこれはそのあたりのB級映画ではありません。

Q:あのB級映画の金字塔、リパブリック・ピクチャーズが総力を挙げてA級映画を製作するとどんな作品ができるか?

A:お金のかかったすばらしいB級映画。

どんなに気合を入れても、発想がもうB級なんですね。ソーニャ・へニーのアイスフィギュアスケート映画の2番煎じを、社長の愛人でフィギュアスケーターだったヴェラ・ラルストンで製作するという見事なお粗末さ。チェコスロバキア出身のヴェラ・ラルストンは、英語の発音が悪く、演技もかなりひどい。リパブリックの首脳陣は「市民ケーン」を観たことがなかったんでしょうか。これは Salammboを地で行ったのだ、といまさらながら感心してしまう作品なのです。

ただ、一応殺人事件がからんでいるわけで(題名をみればわかりますが)、ミステリーの要素がでてきます。このミステリーに関わるシーンが、非常に雰囲気があり、構図もいいし、ライティングが飛びぬけてよかったので印象にずっと残っていました。

Murder at the Music Hall
濡れた舗道、非常階段の影、鈍く光るセダン、すべてJohn Altonの要素なんですが、クレジットでは、彼はアイススケートのシーンだけを担当したことになっています。
でも、これはどうみても、John Altonが手を下しています。
私も深夜枠ではじめてみたとき、ただなんとなく観ていたのですが、夜の街角の風景がどうも頭に残ってしまっていました。それから、2、3年たって、John Altonという映像作家を知り、かれの作品のリストにこの題名があってかなり驚きました。

リパブリックもこれから取り上げていきたいです。。