「沈黙の塔」

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沈黙の塔
Der Turm des Schweigens

1925年

ヨハネス・グウター 監督
Johannes Guter

ゼニア・デズニ、ナイジェル・バリー、フリッツ・デリウス 出演
Xenia Desni, Nigel Barrie, Fritz Delius

クルト・J・ブラウン 脚本
Curt J. Braun

ギュンター・リッタウ 撮影
Gunter Rittau

ルディ・フェルト 美術
Rudi Feld

エーリッヒ・ポマー、デクラ・フィルム、ウーファ 製作
Erich Pommer. Decla-Film-Gesselleschaft Holz & Co., Universum Film (UFA)

デクラ・ライ、ウーファ 配給
Decla-Leih, Univerum Film (UFA)
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飛行機が砂漠で墜落し、二人の男が生死の境をさまよう。そのうちの一人はもう一人を欺いて、自分だけ逃げ、さらに大事な研究成果と恋人をさらってしまう。復讐を誓った男がたどり着いた恐ろしい塔に住んでいた、娘とその父親。その父親はマッド・サイエンティストだった...。

もう、上のスチール写真だけでわくわくするような映画ですね。マッド・サイエンティストが、塔の上であんな格好しているのですから、いい映画に間違いありません。

この映画は「忘れられた名作」として近年注目を浴びている作品です。2006年にプリントの修復が行われ、2007年にベルリン映画祭で記念上映されました(1)。1924年当時、ウーファのスタジオでは4本の作品が製作に入っていたと記録されています。F・W・ムルナウの「最後の人」、フリッツ・ラングの「ニーベルンゲン」、アーサー・フォン・ガーラッハの「王城秘史(Zur Chronik von Grieshuus, 1925)」、そして「沈黙の塔」。なかでも、この「沈黙の塔」の不気味な塔のセットはひときわ目立っていたそうです(2)。

監督のヨハネス・グウター(1882 - 1967)は、ラトビア出身です。彼は、1905年の革命のときに警官を殺害し、ベルリンに逃亡してきました。はい、そうです。彼はいきなり殺人犯です。翌年、理由は定かではないのですが、ラトビアに舞い戻り、そこで逮捕され収監されます。一年間の収監の後、裁判所へ連行される際に再び逃亡、その後はヘルシンキ、コペンハーゲン、そしてウィーンと放浪します。舞台経験をつんだ後、1917年に映画界に転身、1919年には自身の映画会社、センタウア・フィルムを立ち上げます。彼は1920年代、同じラトビア出身の女優、ゼニア・デスニを主演にした作品を何本か監督しています。そのうちのひとつがこの「沈黙の塔」です。彼は、1922年にウーファがデクラを合併したときに移ってきた映画監督たちーフリッツ・ラングやF・W・ムルナウもいますーのひとりです。1930年代半ばまでは、軽い娯楽作品を監督していましたが、その後文化映画を何本か製作した後、公の場から姿を消します。

「支配者(1937)」

脚本のクルト・J・ブラウン(1903 - 1961)は人気の作家、脚本家でした。1920年代から30年代には、週刊誌などにたびたび寄稿し、小説も多く出版しています。ロマンスから何でも担当していましたが、ナチスの台頭後にはプロパガンダ映画の脚本も手がけています。悪名高い「突撃隊員ブラント(S.A.-Mann Brandt, 1933)」(YouTube)の脚本にも参加したようですが、クレジットは外されています。フリッツ・ラングの元妻、テア・フォン・ハルボウと共同で「支配者(Der Herrscher, 1937)」の脚本も担当しました(3)。これはかなりストレートなプロパガンダで、今でも上映制限がかかっています。戦後も特に支障なく書きつづました。

(1)Lathrios Film Festival Database
(2)Klaus Kreimeier, "UFA Story: A History of Germany's Greatest Film Company, 1918 - 1945"
(3)映画「支配者」については、counter-correntの記事(英語)に詳しく書かれています。