2014年3月2日日曜日

広告に載った九つの映画:大暴風 (前篇)

「大暴風」
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大暴風
Windstärke 9. Die Geschichte einer reichen Erbin

ラインホルト・シュンツェル 監督
Reinhold Schünzel

マリア・カムラデック、アルウィン・ノイシュ、アルベルト・ベネフェルド 出演
Maria Kamradek, Alwin Neuss, Albert Bennefeld

クルト・シュタンケ 撮影
Kurt Stanke

フランツ・シュレーター 美術
Franz Schroedter

アルゼン・フォン・クセレピィ、クセレピィ・フィルム 製作
Arzén von Cserépy , Cserépy-Film Co. GmbH

ウーファ 配給
Universum Film (UFA)

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この映画も「フレデリック大帝」のクセレピィ・フィルムの製作です。

武器製造会社の大富豪、ジョン・W・サムソンは、娘のマーベルに莫大な遺産を残します。ただし、条件がひとつあって、いとこのフラナガと結婚すること。マーベルには恋人がいるので、遺産を放棄し、オーシャン・ライナーで長い船旅に出ます。遺産をあきらめきれないフラナガは彼女を追って、結婚を迫ります。マーベルは、モーターボートで逃走を図りますが、そこは暴風圏...。

監督のラインホルト・シュンツェル(1888 - 1954)は、1916年に舞台から映画に転向した俳優です。1919年に、恐らく世界で始めてゲイを取り上げた映画「他の男とは違った男(Anders als die Andern)」(YouTube)で、コンラート・ファイト演ずるゲイの青年を恐喝する男の役で一世を風靡します。その後、ナチスがこの映画のプリントの多くを焼却してしまったため、完全な形では現存していません。シュンツェルは、1920年ごろからクセレピィ・フィルムで歴史大作などを監督、あるいは主演しますが、クセレピィがUFAに吸収されると自分の会社を設立します。ここから1927年の「この世の天国(Der Himmel auf Erden)」など数々のヒット作に主演、ドイツ映画界のトップスターとなります。実はこれらの映画では、監督は別人物になっていますが、ほとんどシュンツェル自身が監督したと言われており、「シュンツェル・フィルム(Schünzel-Film)」とまで呼ばれています。エルンスト・ルビッチのような上流階級を舞台とした上品なコメディ(ソフィスティケーテッド・コメディ)で、彼自身の身のこなしやファッションが注目されました。代表作は「カルメン狂想曲(Viktor und Viktoria, 1933)」(YouTube, 一部)、女性が男装して上流社会に紛れ込む「人間違い/性別間違い」コメディです。これは、ブレーク・エドワーズ監督、ジュリー・アンドリューズ主演の「ビクター/ビクトリア(1982)」の原案になった作品ですね。また「紅天夢(Amphitryon, 1935)」(動画一部)のようなギリシャ劇を借りたコメディも監督しています。

「他の男とは違った男(1919)」
ラインホルト・シュンツェルとコンラート・ファイト

「この世の天国(1927)」
女装をしているのがシュンツェル
シュンツェルは、母親がユダヤ人でした。このことが、実はナチスの上層部の頭痛の種でした。彼くらい人気のあるスターをゲットーに押し込めたり、国外に追放したりするのは、あまりに国民の反感を買う。だから、彼は「名誉アーリア人」ということにして、とりあえず「不問」ということにしたのです。ここにもナチスの「使える人間は使う」というご都合主義が反映されています。シュンツェルは、そういうナチスに諧謔的な眼を向けていました。「紅天夢」でも「天から降りてくる神」というくだりがあります。明らかにリーフェンシュタールの「意思の勝利」でヒトラーが飛行機で雲の上から降りてくるシーンを風刺しています。彼がこの映画をベルリンでロケしているときには、あのゲッベルスでさえ覗きに行ったくらいですから、こんな危険な橋を渡っても大丈夫、と思ったのかもしれません。

彼はそれでも1937年にドイツを脱出、ハリウッドに向かいます。フリッツ・ラングの「死刑執行人もまた死す(Hangmen Also Die, 1943)」(YouTube, 予告編)のゲシュタポ、リッター、ヒッチコックの「汚名(Notorious, 1946)」でアンダーソン博士などを演じます。戦後、ドイツに帰国しますが、戦前のような人気を回復することはなかったと言われています。

ヒッチコックの「汚名(1946)」
アンダーソン博士を演じるラインホルト・シュンツェル

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