立体的に見るということ(2)の続きです
今までの話は、相対的な遠近関係を幾何学的に導き出した方法で表すことについてでしたが、光を用いて遠近感、奥行きを表現する方法もあります。
光と影を用いた立体感
物体の相対的な位置ではなく、物体そのものの立体感を表現する際に、陰影が大きな役割を果たします。陰影をつけることによって、2次元の円が球のように見え、凹凸が把握できるようになります。陰影を用いる立体表現は透視法よりも古く西洋絵画に導入されました。ローマ帝国時代の壁画には、陰影を使って表現された立体的な表現も見られ、また、時代を下ってジオット(1266 - 1377)の作品には、布のひだなどのやわらかい影を用いた、自然な立体表現が見られるようになります。
影による立体造形に非常に積極的だった初期の映画監督は、レックス・イングラム(1893 - 1950)でしょう。彼は彫刻家だったこともあり(最終的には映画をやめて彫刻家になりました)、立体的な造形に非常に興味があったようです。「黙示録の四騎士(1921)」で、無名だったルドルフ・ヴァレンチノ(1895 - 1926)に深い陰影を与えて、それまでの顔の表情のとらえ方とは一線を隠した映像を試みました。
これとは別に、深い闇で遠近感を表現する場合があります。レンブラント(1606 - 1669)の絵画をみるとわかりますが、背景に暗く沈む闇は、何も描かれていないがゆえに、深い遠近感を生みます。
遠景を撮影すると光の散乱で青みがかって見えることは、映画や写真ではごく自然に起きます。しかし、絵画では意識的にそのような描き方をする必要があります。
暗闇と同じように、霧や煙を用いて距離感、深さを表現するのは、常套手段となりました。
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