今回は、ガス燈ノワールと東ドイツノワールについて記録します。
ガス燈ノワール
ちょっと前の記事ですが、Criterion CollectionのサイトでFarran Smith Nehmeが《ガス燈ノワール Gaslight Noir》について紹介しています。
では《ガス燈ノワール》とは何か。
これらの作品はすべて時代劇だ(テレンス・ヤングの「Corridor of Mirrors」は歴史ものとは呼べないかもしれないが、フラッシュバックが時代劇の要素が強い)。狂気や殺人、歪んだ恋愛の暗い物語で点滅している光は、車のフロントガラスやブラインドを通して差し込んでくるわけではない。あるいは警察の取調室の裸電球でもない。これらの物語はガス燈───ヴィクトリア朝からエドワード朝のころまで、美しく、危険なこの光で、町々は照らされていた───で照らされているのだ。
Farran Smith Nehme
もちろん、正式な定義でもなんでもありません。CriterionがStreamingのプログラムとしてキャッチーな名前を作り出したにすぎません。でも、だいたいフィルム・ノワールじたいが、大した定義でもなんでもありませんから、いいんじゃないでしょうか。
この記事では、以下の映画が《ガス燈ノワール》に該当する作品として挙げられています。
01 |
Ladies in Retirement, 1941 生きてる死骸 |
コロンビア・ピクチャーズ チャールズ・ヴィダー監督 |
02 |
Hangover Square, 1944 戦慄の調べ |
20世紀フォックス ジョン・ブラーム監督 |
03 |
Gaslight, 1944 ガス燈 |
MGM ジョージ・キューカー監督 |
04 |
The Suspect, 1944 容疑者 |
ユニヴァーサル・ピクチャーズ ロバート・シオドマク監督 |
05 |
Experiment Perilous, 1944 恐ろしき結婚 |
RKOピクチャーズ ジャック・ターナー監督 |
06 |
Dragonwyck, 1946 呪われた城 |
20世紀フォックス ジョセフ・L・マンキヴィッツ監督 |
07 |
Moss Rose, 1947 モス・ローズ |
20世紀フォックス グレゴリー・ラトフ監督 |
08 |
Ivy, 1947 アイヴィー |
ユニヴァーサル・ピクチャーズ サム・ウッド監督 |
09 |
Blanche Fury, 1948 情炎 |
シネギルド(UK) マルク・アレグレ監督 |
10 |
So Evil My Love, 1948 |
パラマウント・ピクチャーズ ルイス・アレン監督 |
11 |
Madeleine, 1950 マデリーン 愛の旅路 |
シネギルド(UK) デヴィッド・リーン監督 |
12 |
So Long at the Fair, 1950 |
ゲインズボロ・ピクチャーズ(UK) テレンス・フィッシャー、アンソニー・ダーンボロー監督 |
『戦慄の調べ』は以前、角田亮+Murdeorus Inkの上映イベント“UNKNOWN HOLLYWOOD”でとり上げました。ジョン・ブラームは、他にも『謎の下宿人(The Lodger, 1944)』という《ガス燈ノワール》を監督しています。ここでもレアード・クリーガーが好演しています。『アイヴィー(Ivy, 1947)』は最近見たのですが、ジョーン・フォンテーンのアイヴィーが恐ろしすぎます。ラストのあっけなさも圧巻でした。
このなかで「Experiment Perilous」や「Moss Rose」「So Long at the Fair」は未見なので見てみたいと思います。
戦慄の調べ(Hangover Square, 1944) |
DDRノワール
もうひとつ、フィルム・ノワールのリストを紹介します。
「East German Cinema Blog」のJim Mortonが、ドイツ民主共和国、すなわち東ドイツで製作された映画のなかからスタイルとテーマにおいてハリウッドのフィルム・ノワールの定義に入りそうなものを5作品紹介しています。Morton自身も断っていますが東ドイツでは警察権力の腐敗を描くことはできなかったので、その点においては「ノワール的」ではないのかもしれません。
01 |
Die Mörder sind unter uns, 1946 殺人者は我々の中にいる |
Directed by: Wolfgang Staudte Starring: Ernst Wilhelm Borchert |
02 |
Das zweite Gleis, 1962 (The Second Track) |
Directed by: Hans-Joachim Kunert Starring: Albert Hetterle |
03 |
Chronik eines Mordes, 1965 (Chronicle of a Murder) |
Directed by: Joachim Hasler Starring: Angelica Domröse |
04 |
Hotelboy Ed Martin, 1955 (Bellboy Ed Martin) |
Directed by: Karlheinz Bieber, Ernst Kahler Starring: Ulrich Thein |
05 |
Der Fall Gleiwitz, 1961 (The Gleiwitz Case) |
Directed by: Gerhard Klein Starring: Hannjo Hasse |
最初の『殺人者は我々の中にいる』は有名ですね。東西冷戦がはじまる前なので、アメリカでもドイツ映画として配給されたようです。興味深いのは「Chronik eines Mordes」と「Hotelboy Ed Martin」。前者はナチスへの復讐物語と西ドイツの権力構造に潜むナチスたちを絡めた作品、後者は、あのハリウッド・テンの一人、アルバート・マルツが1932年に発表した「Marry Go Round」が原作の映画です。どちらも簡単には見れそうにないので、根気よく探していこうと思います。
"Chronik eines Mordes (1965)" (DEFA Stiftung) |
Just Viewed
ファースト・ストライク(First Strike, 1979)
Directed by: Fleming E. Fuller
Written by: Fleming E. Fuller
Produced by: Fleming E. Fuller, Matthew Shapiro
Cinematography: William Wages
Edited by : John V. Fante
Music by: Marc Verdaguer, Joe Robinson
Production companies: Chronicle Broadcasting
Distributed by: KRON-TV
ザ・デイ・アフター(The Day After, 1983)
Directed by: Nicholas Meyer
Written by: Edward Hume
Produced by: Robert Papazian, Stephanie Austin (associate producer)
Cinematography: Gayne Rescher
Edited by: William Paul Dornisch, Robert Florio
Theme music composer David Raksin
Virgil Thomson (Theme for "The River")
Starring: Jason Robards, JoBeth Williams, Steve Guttenberg, John Cullum, John Lithgow, Amy Madigan
Production companies: ABC Circle Films
Distributed by: ABC
ラスト・カウントダウン/大統領の選択(By Dawn's Early Light, 1990)
Directed by Jack Sholder
Written by: Bruce Gilbert (teleplay)
Based on Trinity's Child written by William Prochnau (novel)
Produced by: Bruce Gilbert (Executive producer), Thomas M. Hammel, Susan Moore (associate producer)
Cinematography by: Alexander Gruszynski
Edited by: Tony Lombardo
Music by: Trevor Jones, Paul Hulme
Starring: Powers Boothe, Rebecca De Mornay, James Earl Jones, Martin Landau, Rip Torn,
Jeffrey DeMunn, Darren McGavin, Ken Jenkins
Production companies: Paravision International, HBO Pictures
Distributed by: HBO
冷戦時代の核戦争を主題にした映画をいくつか見ていました。全部TV映画です。最初の「ファースト・ストライク」はアメリカ空軍がスポンサーとなってサンフランシスコのTV局が製作した映画ですが、この前半部分のフィルムが『ザ・デイ・アフター』に使われています。
By Dawn's Early Light |
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