2014年11月6日木曜日

立体的に見るということ (2)


(4)短縮法(Foreshortening)
これは(3)の「相対的なサイズ」の延長ですが、遠くのものが実際よりもより短く見えるということを利用したものです。この短縮法で描かれた最初期の絵画として、モンターニャの「死せるキリスト(c.1480)」が挙げられます。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂、特に「大地と水の分離(1511)」では、まさしく神がこちらに向かって飛び出してくるような印象を与えます。ルネサンスからロココ/バロックの画家たちは、この短縮法を様々な場面で応用しました。

モンターニャ 死せるキリスト(c.1480)
ミケランジェロ 大地と水の分離(1511)

カラヴァッジオ エマオの晩餐(1601)

映画でこの短縮法が最も使用されるのが銃です。エドウィン・ポーターの「大列車強盗(1903)」から、ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス(1999)」まで、ことあるごとに観客のほうに向けられ短縮法が強調された銃は、今にも弾丸がこちらに向かって飛び出してくる迫力を強調しています。

大列車強盗(1903) エドウィン・S・ポーター監督

お金持ちにつける薬(1940) アール・C・ケントン監督

 マトリックス(1999) ウォシャウスキー兄弟

(5)地平線からの位置
2次元で表現された空間では、地平線が参照の線となります。この地平線から離れれば離れるほど、近くにあるといえます。ルネサンス初期の絵画には、他の遠近感のキュー(鍵)とともに使われていることがあります。

ピエトロ・ペルジーノ ペトロへの鍵の授与(1481 - 1482)

西部劇、特に西部の荒野を舞台としたものでは、周囲に遠近を指示する対象となるものが少ないため、地平線を利用しながら、人物同士の距離や動きを表現するものが多く見られます。ジョン・フォード監督の「捜索者たち(1956)」では、人間の画面上での大きさ、土地の高低などを組み合わせながら、この遠近感を起伏のあるものにしています。

捜索者たち(1956) ジョン・フォード監督

「アラビアのロレンス(1962)」でも、やはり砂漠を舞台としているシーンでは、この遠近表現とクローズアップを交互に使いながらドラマの緊張を高めていきます。

アラビアのロレンス(1962) デヴィッド・リーン監督

(6)遮蔽(オクルージョン)
これは端的に言えば、近くにあるものは遠くのものをさえぎって見えなくするということです。ピエトロ・ペルジーニョの「降誕(1497 - 1500)」では、天使が雲に乗っているのですが、これがどこにいるのかと言うと、背景の山のほうの空ではなく、アーチから手前に浮かんでいるのです。これは天使の羽根が、アーチの一部を遮蔽していることから判るのですが、しかし、どれくらいこちらに近いのかは正直なところわかりませんね。

ピエトロ・ペルジーニョ 降誕(1497 - 1500)

フィリッポ・リッピ(1406 - 1469)の「受胎告知(1445)」では、真ん中の一本の柱で、受胎告知の場面が「向こう」にあることを明確に示しています。

フィリッポ・リッピ 受胎告知(1445)


このように描かれている世界とこちらを明確に分離する手段の一つとして、「フレーム(枠)」があります。すなわち、構図内にもうひとつの枠 -窓、ドア、アーチなどー をもうけて、その向こうの世界、枠にさえぎられて見えない世界をつくりだす手法です。この方法でより広い世界を枠の向こうに想像させ、遠近感を強調することがあります。カナレットのサン・マルコ広場の2枚の絵を比べて見ると、フレームを用いて視点を低く構えフレームを設けた絵のほうが、見ている者に自らの位置を意識させる効果があることがわかると思います。

カナレット サン・マルコ広場(1730)
カナレット サン・マルコ広場(c.1760)

フレームのこちら側が向こう側に比べて暗い場合が多いですね。

カナレット ウェストミンスター・ブリッジから見たロンドンの眺め(1746 - 47)

ジョン・フォードの「捜索者たち」のラストシーンは、まさしくこの「フレーム」と「遮蔽」を組み合わせて、イーサン・エドワーズ(ジョン・ウェイン)の世界の儚さを見事に表現しています。イーサンに抱きかかえられて戻ってきたデビーを迎えるジョージェンセン夫妻、そしてマーティンとローレン、彼らはみんなイーサンを「遮蔽」し、フレーム(玄関)のこちらにやってきます。イーサンは、フレームをこえてこちらに来ることはありません。このフレームは実に重要な役割を果たしています。

捜索者たち(1956) ジョン・フォード監督

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