2010年8月28日土曜日

B級映画の金字塔

Murder at the Music Hall (1946)
Directed by John English
Cinematography by Jack Marta
Cinematography, Ice Skate Numbers, by John Alton


John Altonという撮影監督は、B級映画でもっとも実力を発揮する人です。彼が撮影したB級映画のなかでもAnthony Mannと組んだ作品は今ではA級扱いです。

実は私がこの人の作品で最初に注目したのは、彼の作品のなかでもあまり知られていない"Murder at the Music Hall (1946)"という作品でした。そのときはJohn Altonという撮影監督も何も知らず、ただ、チャーリー・チャンやサイレントのターザンをやっているTVの深夜枠で観たのでした。しかしこれはそのあたりのB級映画ではありません。

Q:あのB級映画の金字塔、リパブリック・ピクチャーズが総力を挙げてA級映画を製作するとどんな作品ができるか?

A:お金のかかったすばらしいB級映画。

どんなに気合を入れても、発想がもうB級なんですね。ソーニャ・へニーのアイスフィギュアスケート映画の2番煎じを、社長の愛人でフィギュアスケーターだったヴェラ・ラルストンで製作するという見事なお粗末さ。チェコスロバキア出身のヴェラ・ラルストンは、英語の発音が悪く、演技もかなりひどい。リパブリックの首脳陣は「市民ケーン」を観たことがなかったんでしょうか。これは Salammboを地で行ったのだ、といまさらながら感心してしまう作品なのです。

ただ、一応殺人事件がからんでいるわけで(題名をみればわかりますが)、ミステリーの要素がでてきます。このミステリーに関わるシーンが、非常に雰囲気があり、構図もいいし、ライティングが飛びぬけてよかったので印象にずっと残っていました。

Murder at the Music Hall
濡れた舗道、非常階段の影、鈍く光るセダン、すべてJohn Altonの要素なんですが、クレジットでは、彼はアイススケートのシーンだけを担当したことになっています。
でも、これはどうみても、John Altonが手を下しています。
私も深夜枠ではじめてみたとき、ただなんとなく観ていたのですが、夜の街角の風景がどうも頭に残ってしまっていました。それから、2、3年たって、John Altonという映像作家を知り、かれの作品のリストにこの題名があってかなり驚きました。

リパブリックもこれから取り上げていきたいです。。





2010年8月19日木曜日

雲の中の4歩


Quattro Passi Fra Le Nuvole (1942)
Directed by Alessandro Blasetti
Gino Cervi, Adriana Benetti

1942年のイタリア映画。すばらしい映画です。
列車でたまたま一緒になったチョコレートのセールスマンと、これから未婚の母となる失意の女性。彼女は実家にしか戻るところがないのですが、厳格な父親が自分のことを許さないだろうと悩んでいるのです。セールスマンは結婚して子供もいるのですが、彼女のことが心配になり、結局ふたりは夫婦を装って実家にいくことになります。
イタリア映画らしい、陽気さとPathosがバランスよくブレンドされた物語ですが、うそ臭くないところがとてもいいです。時おり出てくるロケーション撮影も秀逸。スタジオをチネチッタの初期のころですね。戦後のネオリアリスモにも影響を与えたそうです。



冗談みたいですが、イタリア語では散歩のことを4歩(Quattro Passi)と言うようです。
Kianu Reaves主演のハリウッド映画「雲の中の散歩」(A Walk in the Clouds (1995))はこの映画のリメイクです。

2010年8月14日土曜日

ミラノのドゥオモ

「ミラノの奇跡」 (Miracolo a Milano, Vittorio De Sica, 1951) の最後のシーンでミラノ教会の前の"ピアッツァ・ドゥオーモ"のシーンが出てきます。そのロケーションがとても印象的でした。子供のころ見ていたたくさんのヨーロッパ映画にこういう広場がよく映っていたような気がします。



で、現代人の三種の神器のひとつであるGoogle Mapを使ってこのロケーションの今を見てみると、ずいぶん変化しているのがわかります。

(via milanitaly.ca)

印象的なCinzanoなんかのネオンサインがすっかりおろされています。
たぶん、由緒正しいミラノの大聖堂の前に酒やコーラのネオンサインはけしからん、と言うことになったのかもしれませんが、これはこれで趣があるように感じます。






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2010年8月6日金曜日

フィルム・ノワールの巨匠

T-men
Directed by Anthony Mann
Cinematography by John Alton 

John Alton。私が最も好きな撮影監督のひとりです。
彼の名前を歴代のアカデミー賞受賞で探すと、1951年に「巴里のアメリカ人」でカラーの撮影賞を受賞しています。しかし、彼はむしろ白黒のフィルム・ノワールのスタイルで最も有名です。
他にもフィルム・ノワールの作品にはすばらしい撮影監督が多くいますが、常に積極的にノワールのスタイルで撮影し続けたのは、この人においてはないでしょう。

彼が担当した作品のなかで、まちがいなくフィルム・ノワールに挙げられるのは、

T-men (1947)
Raw Deal (1948)

Hollow Triumph (1948)
He Walked by Night (1948)
The Crooked Way (1949)
Reign of Terror (1949)
Border Incident (1950)
Mystery Street (1950)
The Big Combo (1955)

です。これらの映画はそのほとんどが、B級犯罪映画で安い製作費と短い撮影期間、2流の機材やセットでやり遂げなければなりませんでした。彼はその撮影が速く効率的だったこともあって、本当に多くのB級作品を撮っています。

Mystery Street (1950)
Directed by John Sturges
Cinematography by John Alton

彼の映像は、暗いときには本当に暗いのです。その陰影の凄み、奥行きの切なさ、そしてその暗闇のなかに浮かび上がる陰鬱な表情。それらすべてがフィルム・ノワールのパラノイアの世界を形作っています。

彼の作品はこれから少しずつ紹介していきたいと思います。



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2010年8月4日水曜日

モンティ・パイソンとサド侯爵

The Scarlett Empress (1934)
Directed by Josef von Sternberg
Cinematography by Bert Glennon
Art Direction by Hans Dreier

ジョセフ・フォン・スタンバーグとマレーネ・ディートリッヒの映画といえば"Morocco (1930)"、"Shanghai Express (1932)"が人気がありますが、私はこの”The Scarlett Empress (1934)”が最も印象に残っていました。「恋のページェント」といういささか暢気な邦題とは似ても似つかない、強烈な作品です。ロジャー・エバートが「メル・ブルックスとサド侯爵がコンビを組んだような作品」と評していました。メル・ブルックスなのか、ウディ・アレンなのか、モンティ・パイソンなのかわかりませんが、とにかくもうひとりはサド侯爵ですね。


この映画について「演出が過剰」とか「史実に忠実でない」とか「ストーリーが・・・」とか言われる向きもあるようですが、それはそうでしょう。この映画は演出の過剰を楽しむものです、きっと。監督は、あの無茶苦茶だけど、とにかく魅力的なセットと美術のなかに自分をうずめて、レースをかけたマレーネ・ディートリッヒを最高の照明で撮りたかったんでしょうね。
そんな過剰な自己陶酔と欲求充足は、一方で暗いものを埋め込むのかもしれません。最近見直しましたが、この作品の底辺を流れる暗い、暗い狂気はあまり引きずり出さないほうがいい気がしました。
IMDBによれば、この彫刻はPeter Ballbuschと言う人が担当しています。しかし、彼はこの映画以外ではセット・美術にはほとんど関わっていないようです。とても不思議です。




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2010年7月31日土曜日

2010年になって、フリッツ・ラング


John Carradine in "Man Hunt (1941)"
Directed by Fritz Lang
Cinematography by Author Miller


Fritz Langの"Metropolis (1927)"の新しい復元バージョンが、北アメリカ各地で公開されています。San FransiscoのSilent Film Festivalでは目玉でした。日本にはいつ来るのでしょうか?

"Metropolis"はFritz Langのドイツ時代の大作です。彼の作品のAvailabilityには極端な偏りがあって、"M (1931)"、"The Woman in the Window (1944)"、"Scarlett Street (1945)"のようにWeb上でアクセスできるものから、"Beyond a Reasonable Doubt (1956)"のように非常に鑑賞が困難なものまであります。"Man Hunt (1941)"は最近までアメリカ本国でもDVD化されておらず、imdbのUser Commentsでは「子供のころテレビで見た」と言う人たちが、非常に高い評価をしていました。昨年アメリカでDVDがリリースされ、そして日本でもリリースされました。

この映画はアメリカが第2次世界大戦に参戦する前に製作されたため、少しばかり物議をかもしたようです。海の向こうの戦争にできる限り関わりたくないアメリカ市民も多く、Fritz Lang監督が積極的にナチス・ドイツの残虐さを描くことに難色を示した人たちもいました。

不気味なもの言わぬナチスのエージェントを演じているのはJohn Carradine。"Kill Bill (2003)"に出ていたDavid Carradineのお父さんです。あのGeorge Sandersがゲシュタポの将校を演じているのですが、いつもどおり凄いですね。そのしつこさがあのMGMのカートゥーンに出てくるDroopyにそっくりで最後は笑いそうになってしまいました。



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2010年7月30日金曜日

Any Regrets? Well, maybe Garfield.

これは本当の話か、それともBill Murrayの創作かわかりませんが、Bill Murrayが、なぜ"Garfield"で声の出演をしたかいきさつを話しています。何でもジョエル・コーエンが監督と聞いて、「コーエン(Coen)兄弟の映画には前から出てみたかった」ということで、声優として出演したのですが、実際にやっているとどうもしっくりこない。しばらくして、ええい、とにかく通しで全部見せてみろ、と言って、見てみたら酷い。酷い映画だ。いったいコーエンは何を考えているんだ、と。そうしたら、「ああ、あのコーエン(Joel Coen)ではないですよ」と。そう別のJoel Cohenだったのです。
そのほかにも、彼のパーソナリティがよくわかるエピソードや発言満載のインタビューです。

2010年7月19日月曜日

チャップリンの「幻の作品」


Kids Auto Races at Venice (1914)

"A Thief Catcher (1914)"発見のニュースですが、やはりチャップリンと言うだけで、読売オンラインNHKなど一般のニュースメディアも取り上げますね。これは、彼がマック・セネットのスタジオで映画の仕事を始めたころの作品のようです。この作品が「映画史を塗り替える」かどうかはさておき、Wikipediaでは彼の第4作として挙げていおり、それより前のデビュー作"Making a Living (1914)"と第2作"Kids Auto Races at Venice (1914)"はInternet Archiveで見ることができます。


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スタンバーグが忘れたい映画

















An American Tragedy (1931)
Directed by Josef von Sternberg
Cinematography by Lee Garmes

「日のあたる場所(1951)」(A Place in the Sun)はエリザベス・テーラーとモントゴメリ・クリフト、シェリー・ウィンタースが主演した有名な作品ですが、その20年前にジョセフ・フォン・スタンバーグが同じ題材で撮っていたことをつい最近まで知りませんでした。「アメリカの悲劇(1931)」(An American Tragedy)という原作と同じ題名をもつこの映画は、当時まだ存命だった原作者のセオドア・ドライサーの強い反応を受けて、多くのシーンが追加されたそうです。おかげで、スタンバーグはすっかり気をわるくしてしまい、この映画を自分のものとしない(disown)としたということ。

でも、この映画は非常に印象的な映像と、クライド役のフィリップス・ホームスの冷酷で感情の薄い演技がとても優れていると思います。



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はじめに

City Girl (1930)
Directed by F. W. Murnau
Cinematography by Ernest Palmer


これから先、古い映画のお話をします。
なるべく、面白い話をするつもりです。

点数や星の数で映画のレビューをするブログにはしないつもりです。そういうのは、たくさん映画を観ているほかの方におまかせしましょう。それから、いい映画とか名作とかばかりを紹介するわけでもないつもりです。私が好きな映画についての気ままなお話です。

よろしく。
 
 
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